本田宏氏講演会の挨拶から

  講演の前に協賛団体代表の挨拶ならびに石井隆一富山県知事より来賓挨拶をいただきましたので要旨をご紹介します。 

多くの医療関係団体が想いを一つにして結集

開会挨拶  富山県公的病院長協議会 会長  泉 良平 氏

 度重なる医療費抑制によって社会的共通資本として位置づけられ、公共材でもある医療の根幹が今揺らいでいます。最近になってようやく国は医師養成数の増加を口にするようになりましたが、医療崩壊という国民の健康を守ることができない危機的状況が目の前に広がっています。
 医師・医学生の請願署名活動には多くのみなさんのご協力をいただきました。そして今回の講演会には、富山県医師会、富山大学医学部、富山県保険医協会をはじめ、富山県の多くの医療関係の団体がその想いを一つにして結集しました。
 これまで、ただひたすら国民の健康を守るために、過酷な労働環境、過重労働のなかで医療を提供してきた医師自らが声を上げること、このことが日本の医療を守ることにつながります。
 今回の講演会には、これまで医療危機に関して多くの発言をされ、勇気ある活動をしてこられた本田宏先生をお迎えすることができました。この講演会を契機として、市民のみなさんとともに病院勤務医も診療所医師もそしてコメディカルの方々も心を一つにし、大同団結して医療を崩壊させないための活動を行なってまいりたいと思います。
 みなさまとともに有意義な時間を共有できますことを期待し開会のあいさつといたします。   

医療費削減はすでに限界、今すぐ医療再生の手だてが必要

挨拶  富山県医師会 会長(当時)  福田 孜 氏

 歳末の日曜日にもかかわらず、多くの方々にお集まりいただき本当にありがとうございます。それだけ県民のみなさま方の医療にたいする関心が高まっているのではないかと思っておりますとともに、富山県の医療の一翼を担う富山県医師会としてあらためて責任の重さを感じております。
 ご存じのように、1983年に医療費亡国論という論文がだされ、それから約25年間にわたって日本の医療はこの論文に基づいた医療費削減策がずっと続いてきました。その結果、医療の現場は非常に疲弊し、特に病院勤務医の方々の過重労働は惨憺たるものとなっております。
 勤務医の方々はほとんど毎日病院に行き、365日24時間拘束されているような現状が続いております。現在の日本の医療はその勤務医の方々の責任感でかろうじて維持されてきたと思っております。
 しかし、それもすでに限界にきております。富山県における医療もまったく同じで、各病院の医師数が充足しないまま、さらに多くの医療需要が起こり、それらに応ずるために勤務医の先生方の努力が求められております。
 そのようなことがやっと皆に少しずつわかっていただけるようになりました。すでに時は遅いのかもしれませんが、今すぐにでも何らかの形で日本の医療を再生させるための手だてが必要ではないかと思います。
 本日は、これらの問題について一番多くご発言されている本田先生にお越しいただき、お話を聞かせていただけるというのは本当にうれしいことであり、私も勉強したいと思っております。
 みなさま方もともに富山県の医療をよりよくするためにどうすればよいか、今日はゆっくりと考えていただきたいと思います。  

10年先、20年先のわが国の医療に大きな問題を生じさせる

挨拶 富山大学医学部 医学科長(当時)  井上 博 氏

 日本人の平均寿命は世界一で、WHOやOECDなど海外の調査によれば、我が国の医療制度に非常に高い評価を下しています。しかしながら医療現場にいる私どもや、また医療を受ける立場の皆さんにとって、果たしてこの高い評価を実感できているでしょうか。  
 医療崩壊という言葉に象徴されるように、現在の我が国の医療制度には多くの問題点があります。大学病院も例外ではありません。大学病院は患者さんを診療しているだけではなく、将来の医学を担う医学生や研修医の教育をしています。また将来の医療の発展のために研究もしています。しかしながら医学生の教育をする医師が減っている、医学の研究をする医師が減っている。このことは10年先、あるいは20年先の我が国の医療に非常に大きな問題を生じさせるのではないか、と私ども大学で勤務している医療人は危惧しています。
 何かおかしいのではないか、と私どもは思いますが、如何せん医療問題は間口が広く、かつ奥行きが深いものがあります。具体的にどういう問題があるのか、どんな対策をとれば解決するのか、なかなかとらえにくいものがあります。
 今日これからご講演いただく本田先生は、以前から我が国の医療制度について問題点を指摘し、かつ具体的な解決策を提言し続けていらっしゃいます。
 今日の講演を拝聴して、行政として何ができるのか、医師会としてできることは何か、大学の医学部はどう努力すればよいのか、そして今日お越しの県民の皆さんは何ができるのか、というヒントを、たぶん貰えるのではないかと思います。本日の講演会が明日の富山県の医療の再生に結びつく処方箋を手に入れることを期待したいと思います。 

安心して質の高い医療を受けられる環境づくりのために

来賓挨拶   石井隆一 富山県知事    代読 厚生部次長(当時) 宮本 哲也 氏

 平成16年度からの新医師臨床研修制度の導入等もあり、大都市圏の病院に研修医が集まり、地方には集まらないといった新たな格差が生じております。
 一方、県政世論調査では県政への要望として医療の充実を上げる方が大変多く、身近な地域で安心して質の高い医療を受けられる環境作りが求められています。
 このような状況の中、本県では医師確保対策を最重要課題の1つとして施策を総合的に展開し、医学生への就学資金貸与制度の充実、富山大学医学部の定員増への支援、本県出身の医学生にたいして古里での研修や勤務を呼びかける知事の手紙の送付、研修体制の強化や女性医師のキャリア維持・向上への支援等、さらに医療現場の負担軽減策として医療クラークの導入、助産師外来の推進、小児休日夜間急患センターの整備などを図っています。
 今後も県民が身近な地域で安心して質の高い医療を受けられる環境作りのため、関係機関などと連携しながら積極的に取り組んでまいりたいと思っております。 

5つの医師団体が一致してアピールする機会を得た意義は大きい

閉会挨拶 富山県保険医協会 会長 矢野 博明

 本日は講演会に多数参加いただきありがとうございました。本田先生の熱意とユーモアあふれるご講演に対し参加者一同感謝申し上げます。
 今回、県内を代表する5つの医師団体が一致して県民のみなさんにアピールする機会を得たことは大変意義深く、今後富山県の医療を良くしていく活動に際しても大きな財産になるかと思います。
 また富山県、県議会をはじめ33の団体から協力・後援をいただきましたことに感謝申しあげます。
 会場のみなさん、今確認されたアピールにあるように、富山の医療は絶対に崩壊させない、守るんだ、という強い決意があふれていると思っております。長い時間、ありがとうございました。

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