訪問診療に係る別紙様式14 9月診療分まで不要に

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 厚労省が集合住宅等における一部悪徳業者の在宅患者紹介ビジネスなど「不適切な事例を適正化するため」との理由で導入した「別紙様式14」については、 ①そもそもレセプト審査には不要な書類である、 ②医療機関への周知が不十分である、 ③現状では紙媒体での提出となり、電子請求の流れに逆行する、 ④他の患者情報を記載することには問題がある、 ⑤患者ごと、訪問診療日ごとの作成は煩雑すぎる、 ⑥同一建物への訪問診療を  躊躇させかねない、などの問題点を指摘し、協会は撤回を求めてきました。  今回の経過措置で九月診療分までは「別紙様式14」の添付がなくても請求できることになりましたが、厚労省はレセコンメーカーの団体に対して経過措置の六ヶ月間で別紙様式14の内容を電子化(レセコン入力)できるようにすることを求めており、十月診療分以降も添付不要とする取り組みが重要となります。

東海北陸厚生局富山事務所に申し入れ
 協会は、診療報酬制度そのものに関する改善要求を厚労省に行う一方で、東海北陸厚生局富山事務所に対しては「別紙様式14」に関する問題点を指摘するとともに、会員から寄せられた意見や要望を文書で提出し、東海北陸厚生局及び厚生労働省に医療現場の声を届けるよう要請しました。

審査支払機関には 柔軟な対応を求める
 また協会は、支払基金富山支部・国保連合会と面談し「別紙様式14」の添付漏れや記載ミスを理由とした返戻・減点は当面行わないよう要請しました。  基金・国保とも、レセプト審査には不要な書類であるという認識は協会と一致するものの、レセプト添付が算定要件とされたことは重く、対応に苦慮している様子が伺えました。  五月七日、レセプト提出期限直前に示された経過措置により、九月診療分までは添付がなくてもよいことになり、現状では期間限定ではあるものの請求側の医療機関とともに、審査支払機関における混乱も回避された格好です。

十月以降も添付不要とする取り組み
 政府・厚労省は二〇二五年に向けて「在宅医療の推進」を方針に掲げている一方で、「別紙様式14」の義務化や同一建物居住者に対する訪問診療料を引き下げるなど、在宅医のやる気を削ぐ改定を行いました。  協会は、今次改定で生じた新たな不合理の是正に向けて会員の理解と協力を得ながら取り組んで行きます。

「別紙様式14」に関する会員の声(院長署名の意見欄より)

 協会が四月二十五日に医科開業医会員を対象に行った院長署名「別紙様式14の撤回又は経過措置を求める緊急要請書」には一一四名の協力をいただきありがとうございました。
 院長署名の「私の一言」欄で寄せられた主な意見の要旨を紹介します。

◆在宅医療の推進に逆行するものです。負担が大きすぎます。
◆実際の訪問診察にかける時間が重要なことであり、書類作成が医師の仕事ではない。訪問診察、在宅医療を後退させることになり義務化には益がない。
◆無用な時間を医療者に負担させるもので、とうてい容認できません。厚労省は在宅医療を普及させる計画をつくりながら、何故、このような逆行する規則を設けるのか理解に苦しみます。
◆国が入院期間の短縮や在宅、地域医療を進めている中、それに反するような改定に思います。在宅医療に力を注いでおられる医療機関にとって、質のよい関わり医療を継続させていくことが困難になると思います。財政のこともあるとは思いますが、もっと現場の状況を踏まえたものにしていただきたいと思います。
◆病院から在宅へと移行しようとしている中で、グループホームも在宅と考えるなら、在宅へ移行しづらいシステムであり矛盾を感じる。
◆訪問診療医が何時に誰を診療したなどという行動を逐一報告すること自体ナンセンスであり、むしろ税金から給料をもらっている役人が朝から夕方まで何時に何をしたかを毎日国民に報告すべき(これもナンセンスではあるが)と言いたい。
◆記載には大変多くの時間がかかり診療に支障を来します。要介護度の低い人でも自分では通院できない人が多くおり、その人たちの医療を受ける権利がなくなってしまう。
◆面倒なので同一建物への訪問診療は減らそうと思っています。
◆集合住宅への訪問診療は断らざるを得ないと考えている。
◆当院の医師は訪問診療への意欲を低下させており、院長として彼らの意欲回復に大変悩んでいます。
◆訪問診療への意欲を失います。「記録書」は反対です。
◆訪問診療にはかなりの体力と時間をとられており大変です。今後、減点や煩雑になることなどを鑑みると訪問診療は行わない方向で検討しています。
◆グループホーム訪問の点数が半減した上に、煩雑な手続きが増えるので訪問診療ではなく、一般外来の扱いにしたほうが楽です。グループホームも在宅から外来にして請求、ホームの職員に搬送させますか?
◆もとより訪問診療に積極的なわけではありませんが、断れないため行っている業務です。今回の措置により訪問診療の縮小を検討しています。
◆患者ごと、診療日ごとの作成は煩雑であり、また、提出側、審査側双方の作業の効率化を進める電子請求の流れに逆行するものである。同一建物への訪問診療を躊躇させることにつながる負担である。
◆分単位で診察時間を記録する精度を確保できず、かつスタッフへの労力、負担が大きい割に点数が低くなるという矛盾がある。
  また、記録書の提出により、時間と人数の割合によって個別指導の対象になりやすくなることも予想されます。現在当方でも施設訪問をしていますが、中止を検討中です。見放された患者さんについては国が責任をとってください。
◆新しく訪問診療をすることが嫌になりました、。◆若い先生がしなくなると思います。
◆訪問診療ビジネスをもっとマスコミに公表しそれらに罰則を与えてほしい。
◆レセプトに日時が記載されていれば足りるので別紙様式14は不要ではないか。レセプト審査上も意味があるのか疑わしいと思われる。
◆不適切例をしっかりと見極める方策を明文化し、そちらを規制してほしい。
◆電子請求の意味がない。
◆事務労力が大きく苦慮しており、困惑も大きい。即時撤回を求めます。
◆事務処理の負担が増大し大変です。ほんの一部の不適切事例を根拠にこの措置は苛酷です。机上の理論に拠らず、実地臨床の見地から政策を決定してください。
◆私たちは誠実に一人ひとりの患者さんの在宅医療を支えるために対応しているのです。実際の現場を見に来てください。
◆「不適切事例の適正化」という目的での書類の添付は煩雑になり在宅医療を行う気持ちがなくなってしまします。文書は廃止して、他の方法での評価を望みます。
◆現場の意見を聞き実施を考えてほしい。悪事をする人は必ずいる。他に方法はいくらでもある。
◆訪問診療にどれだけ時間がかかるかご存じでしょうか。「別紙様式14」を各人分ずつ作成することは物理的に不可能です。
◆在宅医療は現状でも記載すべき事項・書類が多いのが問題です。例えば、①在宅療養計画、②在宅酸素、中心静脈、自己導尿、インスリン自己注など在宅療養指導管理の内容、③訪問看護指示書、④訪問リハビリ指示書、⑤主治医意見書、⑥居宅療養管理指導関係、その他にも⑦患家に置いてある連携ノートの記載、⑧各種サービスを利用するための診断書等の記載などで時間がとられています。
  私は同一日同一建物での訪問診療はありませんが、今回の別紙様式14には反対です。現在も訪問時の時間を記入していますが、診療時間は十分~三十分以上と状態に応じてバラバラです。診療時間と住所などの記載は必要なのですか。自己申告では信用できませんか。
◆他の患者へ複数の個人名を連記することは望ましくない。それが全く関係ない保険者に渡ることも問題が大きい。
◆在宅も介護保険も医療保険もすべてまず金ありきで制限されていると思うと残念です。利用する患者さんのことをまず考えるべきではないかと思います。いずれ私も利用する側にまわりますが、さっさとこの世を去りたいと思うこの頃です。
◆とんでもないルールだと思うが、それ以外の自宅への訪問診療でも診療開始、終了時間を記載しなければならないのはなぜか。必要性が高くないことをいちいち記載するのは情けない気分になる。また診療場所を記載する必要があるとされたが毎回自宅に決まっている
◆ただでさえ忙しい医師を一層忙殺させる「悪法」だ。
◆認知症のためのグループホームに四人の在宅医療患者がいる。四人を診察しても普通の在宅患者の一人分にもならない。同じように診察し、患者管理しているのにどうして点数が低いのか?診療意欲が減ります。
◆悪徳業者を取り締まってください。