2011.5.22  認知症ケア県民フォーラム  765人が参加!

認知症の本人と介護者が「共感」し合える方法教えます

 5月22日、協会と認知症の人と家族の会富山県支部等の共催で「認知症ケア県民フォーラム」を開催し、医療・介護従事者や県民765人が参加しました。

 岩手医科大学准教授の高橋智氏が「地域で支えるネットワーク作り」と題して、認知症の原因、診断条件や対応について紹介。認知症の患者をかかりつけ医が診療するメリットとして、①早期発見と早期からの介入が可能、②時間をかけて介護者に繰り返し説明できる、③患者背景を考慮した治療法を選択できることを挙げ、認知症の周辺症状出現の予防にかかりつけ医の役割が大きいこと、認知症は地域の連携によって対応できることを訴えました。

 続いて、関西福祉科学大学准教授の都村尚子氏が「心と心が触れ合うバリデーション」をテーマに講演し、認知症高齢者に共感をもって関わるコミュニケーション法としてバリデーションを紹介しました。

 最後に、若年性認知症を発症しながら看護師として介護施設で働く山本きみ子さんと夫の雅英さんが、患者・家族からの訴えとして、病気に優劣はなく認知症になっても恥ずかしいことではないと語りました。また病院によって認知症の認識に差があることに触れ、多くの先生方に認知症をよく知ってほしいと要望しました。

<第一部>地域で支えるネットワーク作り~かかりつけ医がキーパーソン~

  講師: 岩手医科大学内科学講座神経内科 准教授
        高橋 智  氏

<第二部>心と心が触れ合うバリデーション~言語・非言語による意思疎通~

  講師: 関西福祉科学大学社会福祉学部 准教授
        都村 尚子  氏

<第三部>
患者・家族からの訴え

<開催報告・認知症の対応にかかりつけ医の役割が重要>

 5月22日、詩の朗読(手紙~親愛なる子供たちへ~)、東日本大震災の犠牲者への黙祷でフォーラムは始まりました。参加者は幅広い年齢層にわたっており、特に中高年の方が目立ちました。

周辺症状への対応とかかりつけ医の役割

 第一部は高橋智先生のご講演でした。医療関係者、一般市民の方々のみでなく、「孫世代のための認知症講座」と題し中学生を対象に数多くのご講演をされているとのことでした。全体を通じ平易な言葉を用いて大変わかりやすい内容でした。

 認知症の症状、診断の条件、アルツハイマー病の臨床経過の解説の後、長寿命・核家族化・社会状況の変化が軽症の認知症増加に結びついていることを指摘されました。さらに周辺症状(BPSD)への対処法、軽症認知症への早期介入により重篤なBPSDを回避できることを示され、BPSD出現の予防には“かかりつけ医”の役割が大きいことを強調されました。
 また、高橋先生は岩手県での大震災対応の重要な役職を担っているとのことでした。現在の不自由な避難所生活では、高齢者の方々は地域社会内の緊密な人間関係に慣れ親しんでおり、かえってこの状況で生き生きと活躍しているが、仮設住宅入居後に孤立しないかが今後の心配だと話しておられました。

 結局、認知症患者や介護家族を取り巻く問題は、核家族化・独居、地域・人のつながりの希薄化、経済格差の拡がり・貧困家庭などの社会状況を反映するものであり、医学における根本治療薬の開発だけで解決できるものではなく、適切なケア、地域連携、やさしい社会を実現することが大切という主旨だったのではないでしょうか。
 

広く応用できるバリデーション

 第二部は、都村尚子先生によるバリデーションのご紹介、啓蒙でした。都村先生ご自身がバリデーションと関わることになった経緯、ご経験された実例を通して、バリデーションの内容を解説していただきました。

 身振り手振りを駆使して、聴衆の感情に強く訴えかける話し方、進め方でした。特にバリデーションについて初めて接した方々には、大きな衝撃、感動を与えたのではないでしょうか。介護・福祉関係者、医療関係者にとっても、バリデーションに対する理解を深める一助となったと思います。

 バリデーションで用いられる「共感を持って傾聴する」、「本人の言うことを繰り返す」、「相手の動きや感情に合わせる」等の技法は、認知症の方に対してだけでなく、身体症状を訴える患者諸氏、子育ての場面、あるいは医療の現場でも問題になっているクレーマーに対しても用い得るものではないかと思いながら拝聴しておりました。

認知症の方も同じように見て感じている

 第三部では、山本ご夫妻がご登壇されました。若年性アルツハイマー病の当事者と家族が自ら、発病からの経緯、現在の状況を語られました。「認知症の人と家族の会」等への参加を通じて、前向きに日々を過ごし、さらに将来に向けての展望も持っておられることに感銘を受けました。
 講演を聞き終えて、認知症の方は他者と同様にものを視ており、感情を持っていることを忘れてはならないことがよく理解できました。また、今後は専門家まかせにするのではなく、自らが“かかりつけ医”として認知症の早期対応に今まで以上に関わっていかねばならないと感じております。

(富山県保険医協会理事・浅地 聡)