2011.7.24  在宅緩和ケア県民フォーラム

   がんの最後は大切な人と共に
     ~住み慣れた家で看取る文化の再生を~

 協会は、7月24日ボルファートとやまで「在宅緩和ケア県民フォーラム」を開催しました(共催・エーザイ株式会社)。参加者305名のうち一般県民の方が3分の1を占め、関心の高さが窺えました。

<第一部> 誤解だらけのがんの痛み
           ~在宅緩和ケアの現場から~

講師: 千葉市・さくさべ坂通り診療所院長         大岩 孝司 氏

千葉大学医学部を卒業後、同大学医学部肺癌研究施設外科部門に入局。その後、勤務医を経て01年、千葉市に「さくさべ坂通り診療所」という在宅緩和ケア専門の診療所を開設。終末期のがん患者の在宅療養を応援している。

  第一部は、「誤解だらけのがんの痛み~在宅緩和ケアの現場から~」と題し、さくさべ坂通り診療所院長の大岩孝司先生の講演がありました。先生は、がん終末期在宅緩和ケア専門診療所開設約10年間で800人以上在宅看取りをされています。がんの痛みについて世間の誤解が多いと、著書『がんの最後は痛くない』(文藝春秋)で、がん終末期緩和ケアの本来のあり方について問題提起しています。

不安の解決で痛みを感じる閾値が上がる

 先生によれば、がん末期の苦痛緩和には(1)「痛い!」という「感覚」に対する治療と、(2)痛みに伴う「情動」に対する治療の二つが必要になります。前者の感覚に対する治療とは、WHO方式に従った薬物治療です。後者の情動への治療とは、患者自身が自分のことは自分でわかり、鎮痛剤の使用法も含めて、全て自分で決めることができること=自律を支援することだそうです。    死と直面した患者の心は、病気の進行とともに症状悪化→状況認知不能→思考停止→判断力の低下→一層状況把握困難→不安増強→苦痛症状に耐えられない→パニックという負のスパイラルに陥ります。不安で痛みが増幅されないよう医師も家族も、患者の相談・疑問に傾聴し、事実を率直に伝え、会話することが重要です。

 住み慣れた自宅でこそ、管理されず自由に生活でき自律できれば、不安は解決し気持ちが安定し、痛みを感じる閾値が上がり、苦痛緩和が可能になることがわかりました。

患者の家族、病院看護師、病院医師、在宅看護師、開業医がそれぞれ報告

 <第二部> 県内での取り組み紹介

 座長        小関 支郎氏(高岡医療圏在宅緩和医療懇話会代表世話人)

 報告    遺 族/舟竹 睦子氏(末期がんのご家族を在宅で看取られた方)

    病院医/村上 望 氏(富山県済生会高岡病院緩和家委員長)

    開業医/川瀬 紀夫氏(新川地区在宅医療療養連携協議会)  

    看護師/村上真由美氏(富山赤十字病院 緩和ケア認定看護師)

        野田 美加氏(高岡市医師会訪問看護ステーション)

  第二部は、高岡医療圏在宅緩和医療懇話会代表世話人 小関支郎氏座長の下、県内各地で在宅緩和ケアに携わる各職種による日頃の取り組みとご家族を在宅で看取ったご遺族の経験について紹介がありました。

 ご遺族として舟竹睦子氏は、末期がんの義母の自宅介護・看取りは、不安や戸惑いは伴うものの満足しており、残された家族のその後の人生にも大きな影響力があること、富山赤十字病院看護師村上真由美氏は、病院緩和ケアチーム看護師として、在宅スタッフと連携し患者の希望を尊重し、在宅という選択肢も提供していること、済生会高岡病院緩和ケア委員長村上望氏は、病院チームとして医療依存度の高い在宅患者の症状マネジメントも提供可能なこと、高岡市医師会訪問看護ステーション野田美加氏は、二十四時間体制で患者を支え、看取り後の遺族のグリーフケアも大切にしていること、川瀬医院川瀬紀夫氏は、開業医同士チームを組み、病診連携・多職種協働の下、ICTを利用した情報共有により、安心を提供していること等発表されました。また、フロア発言として本郷はなの木薬局薬剤師松本裕樹氏とほたるの里ケアマネジャー松原良子氏から、在宅緩和ケアとの関わりについてコメント頂きました。

余命宣告を受けた参加者が発言

 会場からは、がんで子を亡くしたご両親から小児がんの在宅緩和ケアの現状、がんで余命宣告を受けた女性から自分の状況の子供への話し方、独居の在宅緩和ケア、死生観について等質問があり、大岩先生、各演者に回答して頂きました。
 本フォーラムが、がんの終末期に大切な家族に囲まれ安心して住み慣れた自宅で生活し、穏やかに最期を迎える選択肢もあることが、県民に広く普及浸透する契機になるものと信じています。

 (富山県保険医協会理事・美濃 一博)