2012.4.22  市民公開講演会「「一体改革」で暮らしと経済、財政はどうなるか?」

市民公開講演会

「一体改革」で暮らしと経済、財政はどうなるか? 

整理されたわかりやすい講演と評判

 

  4月22日、富山国際会議場において市民公開講演会「『一体改革』で暮らしと経済、財政はどうなるか?」が開催されました。講師は社会保障総合研究センター事務局長の三成一郎氏。主催者を代表して矢野博明会長(富山の医療と福祉と年金をよくする会会長)が挨拶しました。

 先の見えない苦しい状況
 後を絶たない餓死や孤立死の事件に象徴されるように、日本はいま、先の見えない苦しい状況に陥っています。このような中で「社会保障と税の一体改革(以下、一体改革)」が行われたら、私たちの社会はどう変わってしまうのでしょうか。今日はこの「一体改革」の本質について、また国民の目線からみてどうしていったらよいのかについて共通認識を深めることができればと思っています。

医療・介護で何が起こるか
 
野田政権は、「一体改革」の具体化に躍起になっています。「一体改革」とは社会保障費に対する国と大企業の負担を軽減するため、社会保障改悪と消費税増税を、複数年にわたって連続的に行おうというものです。 医療・介護分野において計画されている内容を簡単に紹介します。 ①入院期間の短縮や病床・介護施設の縮小を目的とした在宅医療への誘導。 ②国保の運営を都道府県単位に広域化。国保料の引き上げが不可避。 ③70歳~74歳の窓口負担を現行の1割から2割へ引き上げ。 ④高齢者の介護利用料の2割負担化。
 他の分野においても、年金の支給開始年齢の68~70歳への引き上げ、保育における市場化・営利化の推進、生活保護基準の引き下げなど、負担増や給付減のメニューが目白押しです。

「一体改革」は構造改革路線の総仕上げ

 今お話した内容からもわかるように、「一体改革」は民主党政権になって初めて出てきたものではなく、これまで自公政権下で行われてきた構造改革路線の総仕上げと言っても過言ではありません。これを許せば国民にとって「底なし」の社会が到来します。
 このあたりは中曽根政権から小泉政権へと続いた構造改革政治が国民に何をもたらしたかを見ておく必要があります。その前に、かつて世界から賞賛された日本型経営が崩れ、「構造改革」に舵を切った源流をたどってみることにします。これについては「94年2月『舞浜会議』で始まった」(「朝日」2007・5・19)という記事を紹介します。

財界の舞浜会議で「国賊」側が勝利
 94年2月、浦安市舞浜の高級ホテルに大企業のトップ14人が集結、経済のグローバル化のもとで、「新しい日本型経営」をめぐって激論を繰り広げました。オリックス会長の宮内義彦氏は「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」としています。これに対して元経団連会長の今井敬氏は「それはあなた国賊だ」、「一番重要なのは従業員の処遇だ」などと意見しました。この議論を経て、翌年の95年5月、日経連は「新時代の『日本的経営』」を発表し、労働力の流動化、総人件費抑制、低コスト化の方針が打ち出され、結果として「国賊側」が勝利しました。これが99年、2004年の労働者派遣法「改正」へと続き、今日の雇用破壊をもたらしていくことになったのです。舞浜会議に参加していた品川正治氏は「結局、舞浜が、企業も国も漂流を始めた起点ということになった」と振り返っています。

小泉構造改革で雇用破壊・貧困化がすすむ
 
この舞浜会議から始まった財界主導の「構造改革」は、労働法制の規制緩和による膨大な働く貧困層を出現させました。社会保障はもともと正規社員を前提につくられた制度ですが、いまや非正規社員は3割を超え、女性と若者は2人に1人が非正規です。支え手は減り、保険料収入は低迷、これでは社会保障制度が持続不可能になるのは当たり前です。
 さらには小泉「構造改革」政治の下で、雇用・社会保障の破壊が加速され、国民に耐えがたい「痛み」が押し付けられるとともに、すべてに「自己責任」が強要される殺伐とした社会が出現しました。14年連続の3万人を超える自殺者、身元不明の死亡人である無縁死3万2千人の衝撃、凄まじい勢いで増え続ける生活保護受給者。これらの現実が「構造改革」政治と無関係であるとはいえません。日本はいまやアメリカに次ぐ「貧困大国」なのです。

構造改革との決別以外に道はない

  これまでを振り返った結論として、「構造改革」との決別以外に、日本の社会保障再生の道はありません。そして雇用・社会保障拡充を柱として内需、個人消費を拡大する経済政策への転換が必要です。
 日本の貧困層の8割以上が一生懸命働いても貧困から抜け出せないでいる、いわゆるワーキングプアであることから、労働者派遣法の抜本改正、最低賃金の一律1000円以上への引き上げなどが国民生活の底上げを図る社会保障拡充とともに、国政の最重要課題だといえます。

社会保障財源に所得再分配機能を持たせること
 
最後に社会保障の財源について2点お話します。
 1点目は、民主党の財源政策です。そもそも財政の目的の重要な1つに、応能負担にもとづいて集めた税を社会保障などを通じて再分配し、格差や貧困を是正することがあります。ところが民主党は「子ども手当」も高校授業料無償化も庶民増税と一体で行い、応能負担の要である大企業、大資産家には指一本触れていません。同党の財源対策は庶民のポケットの右か左かの違いであって、格差・貧困解消とは対極にあります。このような「水平型再分配」ではなく、応能負担による「垂直型再分配」に切り替えてこそ、国民生活の底上げにつながるといえます。

消費税増税による失敗を 繰り返してはならない
 
2点目は、消費税増税についてです。消費税は低所得者ほど負担割合が重く、所得の再分配とは真逆であり、社会保障の財源にもっとも相応しくない税制です。他の税収も伸びず、国の深刻な財政赤字も改善しません。これは税率を5%に引き上げた97年以降の経済の大失速で明らかです。
 「支持政党なし」が7割を超え、消費税増税反対の世論もほぼ60%の状況にあるように、有権者は政治不信と怒りのなかで模索しています。この国民の揺れる心を、いまだれが掴むかが日本の将来を左右すると思います。