2013.3.18  声明「安倍首相のTPP交渉参加表明に抗議する」

声明「安倍首相のTPP交渉参加表明に抗議する」

 当会理事会は、3月15日の安倍首相によるTPP(環太平洋連携協定)交渉参加の正式表明を受け、表題の内容で声明を発表しました。

     声明
 
                 
安倍首相のTPP交渉参加表明に抗議する

 安倍首相は3月15日、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加を正式表明した。富山県保険医協会理事会は、国民のいのちと健康を守る立場から今回の交渉参加表明に強く抗議する。
 今回の交渉参加表明は、どのような理由を付けようとも事実上の公約違反と指弾される行為である。昨年末の衆議院議員選挙で当選した自民党議員294人のうち205人が選挙時にTPPへの反対を訴え、TPP参加に反対する議員連盟「自民党TPP参加の即時撤回を求める会」に衆参合わせて240人が加盟する中での表明となった。
 周知のとおり、日米財界は早期の交渉参加表明を再三促し、米国政府も陰に陽に求めてきた中、国民の利益より米国との関係、財界の意向を優先したものといえる。

 この間の運動により、TPPが及ぼす影響として農産物の関税撤廃とともに国民皆保険制度崩壊の懸念が取り上げられるようになった。自民党TPP対策委員会でも国民皆保険制度などの「聖域」を最優先で確保し、不可能なら脱退も辞さない覚悟を首相に求める決議が採択されてはいるものの、実際の交渉でどうなるか予断を許さない。 また、今後のTPP交渉において、国民皆保険制度を揺るがす内容が議題にならないという根拠はどこにもない。

 TPPは、そもそも関税引き下げなどに止まらない「貿易と投資の協定」であり、金融・保険分野、医薬品・医療機器分野、特許など知的財産分野において医療のあり方を左右するテーマが幅広く存在する。最初の段階として医薬品の特許保護の強化、薬価決定過程に米国資本が参加することによって引き起こされる薬価の高騰が懸念される。薬価等が上がれば、診療報酬本体を圧迫し医療機関の経営に大きな影響を与えることにつながる。また、公的保険財政の逼迫が続けば、徐々に保険適用されない医薬品・技術が増え、国民皆保険の空洞化や混合診療の全面解禁につながる可能性がある。

 TPPの本質的な目的は、参加国の国内の社会制度やルールを特にアメリカのグローバル企業にとって有利な基準に変えてしまうことであり、ISD条項(投資家対国家の紛争解決)の導入などを経て、延いては国家の主権そのものの喪失を意味する。 私たち富山県保険医協会は、国民のいのちと健康を守る医師団体として、TPPの問題点を広く国民に知らせ、交渉参加撤回を求める世論喚起の活動を引き続き展開する決意である。

2013年3月18日
富山県保険医協会 3月度理事会