安保法案反対の活動

(2015年11月24日 第37回定期総会議案書より)

 今年2015年は、戦後70年続いた平和国家日本が、また立憲主義を基礎とした法治国家日本が、安倍政権によって乱暴に踏みにじられた屈辱の年として、歴史に刻まれることになるであろう。

なぜ協会は安保法案に反対したか
 保険医協会理事会は平和を希求し命と健康を守るという協会の設立趣旨から、安全保障関連法案について議論を続けてきた。
 ①集団的自衛権の行使は歴代政府が一貫して憲法上禁止されているとしてきたものであり、一内閣が拙速に解釈を変更することは無理があること、②法案全体に対し圧倒的多数の憲法学者、歴代内閣法制局長官、元最高裁長官らが違憲と批判していること、③法案の必要性について政府の答弁が二転三転し、「立法事実」が破綻したこと、④世論調査で反対が過半数に達し、調査のたびに増えていること。
 以上の理由から協会は安保法案に反対してきた。

国民全体に広がる「反対」世論
 今年5月に衆議院で法案審議が始まって以降、毎月世論調査が行われた。回を重ねても「国民への説明が不十分」との回答は概ね80%を越え、「今国会での成立の必要性なし」は60%、「法案そのものに反対」は常に過半数に達し、「賛成」は30%にとどまっていた。これまで与党の圧倒的多数による法案成立が確実視される情勢では、諦めと無力感で反対世論は尻すぼみとなりがちだったが安保法案は違っていた。
 法案に反対するデモや集会も空前の規模となった。国会前で連日行われる数万人規模の反対行動は全国に広がり、その参加者も若者、主婦、サラリーマンなど、ネットなどの呼びかけに応え自分の判断で集まってきた人々が目立った。これまでにないかたちでの政治活動に、無党派層の覚醒が始まったという識者もいた。

「安保法案医師署名」と「緊急アンケート」
 7月13日、衆院特別委員会での質疑打ち切りが予想されるなか、協会理事会は「安保法案の今国会での廃案を求める決議」を採択した。また医師・歯科医師アピール署名に取り組み、118人から寄せられた。これらを地元選出国会議員に送付すると共に、採決の際には賛成しないよう要請した。
 9月19日未明に法案が参議院で可決されたことを受け、医師・歯科医師署名協力者に緊急アンケートを行った。回答の多くは法案成立に気落ちしておらず、むしろ立憲主義・民主主義を取り戻そうという決意が感じられるものが多くあった。

許せない「国民より先に米国に約束」
 アンケートの「これは許せない」の設問では、「安倍首相が国民より先に米議会で法案成立を約束」がもっとも多かった。
 思い返せば今年4月末に新しいガイドライン(日米防衛指針)に合意し、安倍総理はその直後に渡米、まだ日本では国民に説明してもいない安保法案の成立を約束した。そして5月も半ばになってその法案を衆議院に提出。一方でそれまで集団的自衛権行使を違憲としてきた内閣法制局の人事に介入し、長官をイエスマンに変え、閣議決定で憲法解釈を変更しておいた。これほど姑息で国民と憲法を軽んじた政権がこれまでにあっただろうか。 

昨年は小林節氏、青井未帆氏で講演
 第二次安倍内閣は「日本を取り戻す」というスローガンの下、内閣法制局長官の交代、NHK人事への介入、武器輸出三原則の根本的見直し、国家安全保障会議の設置、特定秘密保護法の成立・施行、集団的自衛権行使の憲法解釈変更の閣議決定など、海外で戦争ができる国への準備を進めてきた。そのため協会は「日本の進路を問う講演会」として昨年は慶應義塾大名誉教授・小林節氏、学習院大大学院教授・青井未帆氏の講演会を開催、今年6月には元防衛官僚の柳澤協二氏を招いて講演会を開催した。

「私の話は歴代自民党政権の公式見解」
 柳澤氏は、自身が40年間仕えてきた歴代自民党政権は日米安保を平和憲法の制約の下で何とか折り合いをつけてきた、それを安倍政権は一内閣の専断で法的安定性を壊そうとしていると説明。また、殺し殺されるかもしれない自衛隊員、襲撃を受けやすくなる海外企業やNGOの人たち、日本国内で発生するテロ、些細な武力衝突から戦争に拡大する危険など、安保法案のさまざまなリスクを国民に説明しようとしない政府・与党を厳しく批判した。

9.15 安保法案の採決に際し、富山県選出・出身国会議員へ要請

ぜひお読み下さい(富山県保険医協会主催の講演会です)

 01:柳澤協二2
 ●柳澤協二 氏(2015.6.23 )
 ●小林 節 氏(2014.6.  6 )
 ●青井未帆 氏(2014.6.14 )