医療支援、JMAT⑨

第9陣 早い段階で行っていれば必要な医療ができたのではないか

福老館クリニック  洲崎 雄計

敢えて指摘したい  コストベネフィット

左から、下崎さん(県医師信用組合)、大作さん(県医師会)、洲崎医師、川田看護師、櫟看護師(ともに福老館クリニック)

 言わずもがなの惨状はご存じのとおりです。言葉を失う光景がただ広がっていました。いかに悲惨な状況かは、他の皆さんに聞いて頂くとして、今回私が参加してならではの感想を述べたいと思います。それがこれからの私たちに必ずや役に立っと期待しての確信のもと、ややもすれば「冷たい方程式」(SFの最高傑作と思っています。是非一度ご覧ください。)みたいな感じを受けられるかもしれませんが、敢えて指摘してみます。  
 まずコストベネフィットを考慮すべきではないかということです。最小努力で最大効果を狙うなら、また狙うべきですが、戦力の逐次投入は戦術上最も忌み嫌われる方法です。必要とされる時に効果を集中させるべきです。ですから震災のなるべく早い段階で、どっと行くのも受け手の問題もあると思いますが、本当に必要な時に必要な処置ができたのではと正直悔やまれました。もとより受け入れ体制云々もあるかもしれませんけれども、こちらも行く以上自己完結のつもりですから、ある程度体制が整ってからじゃないと行けないわけじゃないと思います。第9班として赴きましたが、看護師2人連れて、事務兼運転手2人とともに遠路はるばる時間も労力もコストもかけて、1日9か所回っての診察が30人弱のみ。しかも大半の方が医療機関にかかれない訳でもありません。ある意味御用聞きみたいな雰囲気で「これってどうよ」みたいな…感じは正直ありました。ただまだまだ必要としてくれるならという気持ちで頑張ってきましたが、早々と撤退する県もあります。
 ご自宅と診療所も被災された地元いわき市の医師会長も、一刻も早く地元で完結したいと仰られていました。すでに地元の病院では医師の派遣を見送っている所もあります。いわき市医師会がまだまだ来て欲しいというなら最後まで行くべきとは思いますが、どこかで線引きをする判断、決断を考えておくのも大切なことに思えました。

「備えよ、常に」早い段階で対応できるシステムを

 勿論継続は力なりのご批判も重々承知しての思いです。でも得てしてこちらの自己満足なのでは、という懸念が頭から離れませんでした。あとは受け手側の問題です。未曾有のとか想定外のという表現が大流行りですが、ハードよりもシステムというかむしろソフト面が非常に大切と思われました。これらは前もって準備しておくことができる訳ですから、「備えよ、常に」の精神で今後考えていかなくてはという思いを強くしました。

(2011年5月15日 とやま保険医新聞)

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