2013. 6.1   歯科指導監査懇談会

歯科指導監査懇談会を開催 保団連・田辺副会長を迎えて

6月1日、65人が参加(ホテルグランテラス富山 4F・祥雲の間)

6月1日、65人が参加(ホテルグランテラス富山 4F・祥雲の間)

 協会は6月1日、個別指導にたいする日頃からの備えをテーマに、「個別指導・監査」懇談会を開催しました。
 当日は歯科会員65人が参加して、カルテ記載のポイントやレセプト電子審査の現状と留意点について学びました。また厚生局の開示資料を使い、富山県の指導の現状について意見交換しました。
 講師の田辺隆先生は支払基金の審査委員や北海道歯科医師会の社会保険委員長の経験も活かし、具体的で解りやすく講演されました。
 

講師田辺先生2 講師 全国保険医団体連合会副会長
    同  歯科社保審査対策部長 田辺 隆 先生

 
 

 

 

個別指導の対応、ここがポイント
①チェックポイントは療担・カルテ・点数表

 個別指導でチェックされるのは大きく分けて「療養担当規則(療担)に則った診療であるか」「遅滞なくカルテが記載されているか」「歯科点数表の解釈(青本)に則った請求であるか」の3点です。順を追って解説します。

1.療養担当規則

 第4条「被保険者証の返還」について。患者から預かった被保険者証は、治療が全て終了したときや、他科受診などで必要になったときに返還しなければならない、とされています。どこにも、月初めに一度確認する、という規定はありません。資格喪失後の受診で保険者からお尋ねがありますが、原則は上記の通りということを心得ておいて下さい。
 第五条「一部負担金等の受領」について。歯科で該当するものは、点数表に則った一部負担金と、金属床総義歯などの保険外併用療養費、それといわゆる昭和51年通知と称されるメタルボンドなど一部の混合診療の料金、の三つです。歯科は混合診療ができる、と思っておられる先生がいますが、できるのはこの歯冠修復・欠損補綴の部分だけです。患者がインプラント治療を希望して来院した場合は、最初から自費扱いになります。この点は個別指導で指摘の多い箇所なので一度整理をしておいて下さい。
 第二十一条「歯科診療の具体的方針」。ここでは検査や投薬、歯冠修復などいずれの行為も、「診療上必要があると認められる場合に行う」と規定されています。要するに濃厚診療はしてはいけないということです。
 例えばレセプト審査をしていると、生活保護の患者全てに感根即充を行なっている事例を見かけます。他にも、初診患者すべてにオルソを撮影して、全てにPの精密検査をして、一日で全顎スケーリングという事例も見かけます。個別指導では、本当に必要があって行なった治療なのかと問われることになります。
 ただし、必要があって行なった治療であればしっかり反論すれば良いのです。やってはいけないのは、下を向いて黙ってしまうこと。治療の中身については、技官に何を言われようとも、歯科医師としての信念を持って、こちらの言い分をしっかり主張することが重要です。

2.カルテ記載

別指導で指摘される事項のうち、約半数の45%はカルテ記載に関わるものです。カルテ記載さえしっかりしていれば、指導は恐るるに足らず、ということです。
 はじめに、カルテ記載の一般的な注意事項について二点触れます。  
 一つは代筆について。有資格者である歯科衛生士に口述筆記させることは厚労省は認めていますが、これは口腔外科でオペ中に手が離せないとか、1号用紙にある現症欄の記載で、口腔内の状態を代筆させるとか、そういった狭い範囲しか想定されていません。2号用紙の治療行為の部分を代筆させることは厳に慎んで下さい。
 もう一点、複数の歯科医師が担当する場合に、責任の所在を明確にするため押印やサインをすることについては、しっかり注意をお願いします。

1号用紙は漏れなくしっかり

 続いて、初診時に記載すべき事項です。個別指導において技官がまずどこを見るかというと、この1号用紙です。ここがしっかり記載されているかどうかで勝負は決まります。2号用紙については、技官は主治医では無いので何とでも反論できるのですが、1号用紙は治療内容ではない部分だけにご注意下さい。
 スライド④の太枠内の患者名などは、保険医療機関の責任で記載するとされている部分ですので、何も先生本人が記載する必要はありません。スタッフのだれでも記載できます。空欄の無いようにだけして下さい。なおここに被保険者証のコピーを貼り付けている医療機関もありますが、これは認められませんのでご注意下さい。  
 スライド⑤の現症欄については、保団連の指導対策テキストには「記載することが望ましい」とありますが、望ましいではなく、絶対に記載して下さい。ここは衛生士であれば口述筆記させても大丈夫です。
 主訴の欄について。患者の言葉をそのまま記載して下さい。「右上○番、冷水痛を訴える」と言った表現ではダメです。「右上の歯がしみる」などとして下さい。特に最近は不定愁訴を訴える精神を病んだ患者も来院しますので、話した言葉のまま記載することで、後でトラブルになったときに、自身を守ることにも繋がります。
 次いでスライド⑥の病名分類です。ここは「P」だけではダメです。度数分類をしなければなりません。どの部位がP2で、どの部分がP3か、といったことを的確に書いて下さい。指導では、この箇所と歯周治療の内容に食い違いがないか、事務官がチェックしています。P2の部位はFoPをしていて、P3の部位は歯周外科をしていないということがあると、「歯周治療についてどのように考えているのですか」との追求が来てしまいますので、度数分類と治療内容は一致していなければなりません。
 スライド8開始・終了・転帰欄もそれぞれしっかり記載して下さい。技官によっては、転帰欄に中止と書いていないと未来院請求を認めない、という話も聞きますので、特に未来院請求時はご注意下さい。 (次号に続く)