報告④ 精神病棟

医療崩壊の失政を国に問いつつ我々も考えなければ

医療法人社団和敬会理事長 谷野 亮爾

 民間病院医療の崩壊は未だ進行中です。日本病院団体協議会が平成19年にまとめた「病院医療の崩壊スパイラル」という図があります。6年ほど前のものですが、現在でも内容はそのとおりだと思っています。
 平成16年に必修化された新研修医制度が行われるとき、厚労省の担当者は「先生、これを実施すると絶対に医局講座制が崩壊して、地域に潤沢に医師が行くようになります」と言ったが何のことはない、反対のことが起きています。大失敗な政策だったと思う。
 看護師の偏在についても地域差があります。これは7:1入院基本料が診療報酬改定で導入されたことによりますが、これも失敗策。7:1が作られた途端に世の中から看護師が消え、公的病院、大規模病院だけが経営的に良くなりました。

精神科のベッドを削減し精神科特有の特養を作れ

 精神科病院の入院料は、他科の入院料の約半分です。なぜ2分の1かというとベッドの数が多いことがあります。全国32万床は多すぎる、国が責任をもって地域移行しなければダメで10万床は減らすべきです。我々自身も努力しなければいけませんが、8割は国の責任。
 国はちゃんとした地域医療の受け皿、特に精神科患者専用の特別養護老人ホームを作るべきだと思います。なぜかというと、認知症があっても要介護度が低ければ今の特別養護老人ホームには入所することができません。そうすると、地域にサービス付き高齢者住宅などを作ればいいという意見が出されますが、そういった方々は入院しているよりも自己負担が高くなります。そのような状況でどうして地域の施設が使えるか。そういうことも含めて我々が考えなければいけません。何でも国の責任とか、政治家が悪いと言えばいい問題ではありません。

重度の認知症・統合失調症患者について

 認知症患者で入院させなければいけないときはそうしないといけない。しかし認知症の中核部の重い方を精神科病院に理念なく入院させることは良くない。また、重度統合失調症の方は大体において大学病院で診るべきです。ガンでも何でも症状が重い方は高度先進病院に行っています。民間の精神科病院に重い方が来られるが、本来は大学病院や国立病院という公的な先進医療のところで診療してもらえればいいのではないか、そういうことを考えたりしています。